これから普通自車免許を取得しようと思った時、「AT車」「MT車」の違いで迷う方もいらっしゃるかもしれません。正式にはAT限定を取得するか、もしくはMTで取得するか、となります。

「AT車とMT車の違いがわからない」
「どちらを取得した方がお得なのか知りたい」

そんな方々に向けて、自動車免許のAT車限定とMT車を徹底比較致します!

1.普通自動車免許のオートマ(AT)・マニュアル(MT)とは?

普通自動車におけるATはオートマチック・トランスミッションのことで、オートマなどと呼ぶこともあります。MTはマニュアル・トランスミッションのことで、マニュアルと呼ぶこともあります。

それぞれの違いを端的に言うと、「運転時の操作方法」にあり、さらに具体的に言うと「ペダル」「チェンジレバー」が異なります。

まず、オートマの場合はペダルがブレーキとアクセルの二種類ですが、マニュアルの場合はここにクラッチペダルが加わります。
アクセル・ブレーキは分かりやすいですが、「クラッチって?」と思うかもしれませんね。クラッチとは動力伝達装置です。エンジンとトランスミッション(変速機)の間に搭載されており、マニュアル車ではこのクラッチを使って動力(エンジン)をトランスミッションに伝達したり、あるいは遮断したりといった制御を行います。このクラッチを巧みに使いこなすことで、タイヤに負荷をかない適切な動力を伝えることが可能となります。

オートマ車にはこのクラッチが搭載されていないというわけではなく、自動で行ってくれるためにATの呼び名が付けられました。マニュアル車でクラッチ操作を誤ると、いわゆるエンスト(エンジンストール)が起きてしまいます。

また、チェンジレバー(シフトレバー)による変速操作もマニュアル車の大きな特徴です。「ギアを変える」などと称されることもありますが、オートマ車はこのチェンジレバーでの操作が「駐車(パーキング)」「後退(バック)」「前進(ドライブ)」のみであることに対し、マニュアル車では「ローギア(1速)」「セカンド(2速)」「サード(3速)」「トップ(4速)」「オーバートップ(5速)」の五段階操作が求められます。ちなみに前から順にパワーを要する操作となり、1速が発進または低速,そして2速・3速と進につれて加速していくこととなります。トップは走行用,オーバートップは高速用です。
なお、この変速のミスも起こりやすく、車に負荷がかかるとされています。

このようにオートマ車に比べると、マニュアル車はドライバーが「操作しなくてはいけないこと」が多い、というのがわかりますね。

2.普通自動車免許取得はどう変わる?AT限定と限定なし

前述の通り、オートマ車よりもマニュアル車の方が、運転操作で求められることは多くなります。そのためMT免許(限定なし)はオートマも運転することができますが、AT車限定はオートマのみ。

教習所での履修時限数や、免許取得にかかる費用も異なります。
所持免許なしまたは原付免許のみの方の場合、AT限定は技能教習が第一段階で12時限、第二段階で19時限の合計32時限。学科教習は第一段階で10時限、第二段階で16時限の合計26時限となります。
一方の限定なしは技能教習が第一段階で15時限、第二段階で19時限の合計34時限。学科教習は同一の合計26時限となります。

とは言え価格が大きく変わるかと言うとそうではなく、教習所やプランにもよりますが、だいたい合宿免許であればAT限定で17万円程度~(ただし繁忙期は26万円台~)、限定なしで20万円程度~(繁忙期は30万円前後~)です。

取得までの最短期間はAT限定で14日~、限定なしで15日~。
なお、通学免許の場合は価格・期間ともにもう少し高くなったり、限定有無で開きがあったりするケースも見受けられます。なぜなら合宿免許は教習所が効率的に組んだカリキュラムのもと受講していくスタイルですが、通学免許はライフスタイルによって受講がまちまちになるためです。また、教習には予約が必要となりますが、週末や繁忙期で予約がうまく取れず、延び延びになってしまった・・・そんな声も聞こえます。
AT限定にしろMT車に挑戦するにしろ、かかる費用や期間をよく比較して、教習所のプランを選びたいですね。

なお、教習途中で「やっぱりマニュアル車からAT車限定に切り替えたい」といった場合、相談すれば対応してくれるところがほとんどです(手数料が発生する場合もあるので、お問合せ下さい)。なお、AT車限定からマニュアル車の運転に切り替えたい場合は、教習途中ではできません。次にご紹介する「AT限定解除」が必要となります。

◆AT限定解除とは?

「AT限定で免許を取得したけど、やっぱりマニュアル車も運転したい」

そんな方は「AT限定解除」によって免許の切り替えを行うことが可能です。
教習所で4時限の技能教習を受講したうえで合格証明書を発行してもらい、運転免許センターで審査を受ける、というもの。審査といっても書類審査で、限定解除にかかる教習費用がだいたい5万円前後~、審査手数料が1,400円となります。

なお、教習所に通わずに直接免許センターに出向き、技能審査を行う方もいらっしゃいます。その場合は、教習費用はかからず、手数料と運転免許センターでの貸車料が1,000円前後~(運転免許センターによる)かかってきます。とは言え一発試験は難しく、まったくマニュアル車が初めてという方は教習所の利用をお勧めしております。

3.もっと知りたい。マニュアル自動車のこと

かつて1991年に「AT限定」が自動車免許に導入されて以降、その取得者は年々増加を続けてきました。
なぜなら、やはり初心者では難易度が高いとされる「クラッチ操作」「チェンジレバー操作」が、オートマ車であれば自動で行ってくれるためでしょう。

今やわが国で製造・販売される新車のほとんどがAT車(2016年には約98.4%!)となっており、もはや「マニュアル車こそ運転していると言える」「AT限定免許は恥ずかしい」などと言った風潮は廃れていると言えます。これは、若い世代により顕著ですね。

しかしながら、もちろんマニュアル車にはオートマ車でしか味わえない魅力があります。本項では、マニュアル車とはどういったもので、マニュアル車の運転に向いている方を深堀していきたいと思います。

マニュアル車はどんな車があり、どこで乗る機会があるの?

前述の通り、現在市販されている国産自動車の多くはオートマ車です。
しかしながら、当然マニュアル車も需要があり、中には「マニュアル車でないと」と言った方もいらっしゃいます。

ではマニュアルにはどのような車があるかと言うと、まずスポーツカーやレーシングカー,あるいはオープンカーといった趣味性の高い車です。
初免許取得でいきなりスポーツカーを購入できる猛者は少ないでしょうが、「いずれ・・・」と憧れている方はぜひ限定なしの免許を取得してほしいところ。 もっとも、近年のスポーツカーは「ATモード」「MTモード」ともに搭載しているケースも見受けられます。
とは言え往年のクラシックカーもまた、マニュアルであることが多いため、やはり趣味を極めたいならMT車と言えるでしょう。

さらに、大型トラックやバスといった大型免許にはAT限定がなく、必ずマニュアル操作が必要となってきます。

加えて、海外、特に欧州は今なおマニュアル車が市場でよく普及しています。そのため輸入車はマニュアルであったり、また海外でレンタカーを借りる際はマニュアルのみであったりするケースが見受けられます。

MT車の運転に向いている人物とは?

前項の内容を踏まえたうえでマニュアル車の運転に向いている,AT限定ではなくMT免許を取った方が良い方は、ズバリ「仕事で運転するキャリアを想定している」方です。

前述の通り、トラックやバスといった職業用の車は普通自動車免許ではなく二種免許や大型免許を取得する必要がありますが、その際にAT限定はありません。マニュアル車を運転・操作することとなります。

もちろん、実際の取得時に「絶対にAT限定では教習についていけない」ということはありませんが、やはりマニュアル操作に慣れておきたいところ。また、輸入車販売業の中には、「入社したスタッフは、AT限定免許取得者であれば限定解除してもらう」といったところもあるとか・・・。なぜならお客様に運転操作をご説明したり、時にはお客様のご自宅まで商品を運転してお届けすることがあるためです。
こういった背景から、「仕事」として車を運転しようと思っている方は、ぜひMT免許を取得しておきましょう。

また、前項でも解説したように、趣味性の高い車の多くはマニュアル車です。
こういった車種に憧れる方は運転が好きな傾向にあり、「クラッチ操作やギアチェンジでより運転の実感が高まる」と評されるマニュアル車に、ハマる方は多いと思われます。 ぜひ車が好き,憧れの車があるといった方は、MT車免許を取得したいところです。

4.結局運転免許はAT限定とMTどっちにすればいいの?

運転免許取得時、AT限定とMTどちらにすればいいのか迷う方は、それぞれのメリット・デメリットを比較して決めてみるといいでしょう。

AT限定の場合

◆メリット

  • ・MT車に比べて運転操作が容易
  • ・教習時間が少なく、費用も抑えられる傾向にある
  • ・MT車を運転しなくても国内では困ることが少ない
  • ・身分証明書として免許取得する場合にはAT限定で十分

◆デメリット

  • ・マニュアル車を運転することはできない
  • ・マニュアル車を運転する場合にはAT限定解除を行わなくてはならない
  • ・大型バスやトラックのための運転免許取得時、苦労するケースがある
  • ・履歴書に「(AT限定)」と入れなくてはならない

MTの場合

◆メリット

  • ・「運転している」実感を得られやすい
  • ・今後のキャリアで選択肢を広げやすい ※マニュアル車運転を義務付ける企業への就職条件を突破できる
  • ・趣味性の高い車を楽しめる
  • ・輸入車や海外でのレンタカー運転に対応できる
  • ・オートマ車も運転できる

◆デメリット

  • ・AT限定よりも教習が長くなり、費用も高くなる
  • ・AT限定に比べて難易度が高い
  • ・国内市場に普及する多くの車がオートマであるため、せっかくMT免許を取っても運転する機会が設けられないこともある
  • ・操作を誤るとエンストを起こしてしまう ※ただしアクセルとブレーキの踏み間違えといった大きなミスは引き起こしづらいと言われている

こういったメリット・デメリットを踏まえて、どちらが良いか選択したいところですね。

もっとも、前述の通り「MT免許を取得しようと思ったけど、やっぱり難しいからAT限定にしたい」といった場合でも、教習途中で対応できることがほとんどです。また、その逆に「AT限定を取得したけど、やっぱりマニュアル車の運転に挑戦したい」といった方にも、AT限定解除といった道があります。
そのため現在の状況を鑑みながら、気軽に決めるのも一つの手ではないでしょうか。

5.まとめ

普通自動車免許取得の際に迷い勝ちな、オートマとマニュアル車について解説致しました。
AT限定の場合はオートマ車のみですが、限定なしであればどちらも運転可能なこと。マニュアル車はクラッチ操作やギアチェンジといった運転操作がオートマよりも難しくなるものの、趣味性の高い車を運転したい方や、仕事での運転を考えている方はぜひマスターしておきたいこと。とは言えどちらがいいかは個人差があるため、AT限定解除等も視野に入れつつ選びたいことなどをお伝えできたでしょうか。

とりあえずAT限定を取るもよし、憧れのマニュアル車に乗るもよし。ご自身のライフプランと相談しながら、最適なチョイスをしてくださいね。

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